この人間の罪の震源地に突っ込んで、罪の原点を爆破しようとする方がキリストです。
　最近、新聞で戦争中の魚雷艇の解説記事を読みました。飛行機によるカミカゼ特攻の水中版ですね。魚雷という戦艦に向かって発射するスクリューつきの爆弾がある。その魚雷に人間が乗って人間魚雷となって敵艦に突っ込む、戦死必至の兵器です。
　こうした兵器を日本人ならやるだろうと、大正のころには既にドイツあたりでは、大衆雑誌のキワもの記事になっていたこともあったそうです。
　この人間魚雷、戦争の当時、「回天」と呼んだそうですが、この人間魚雷に志願した若者たちの記事が最近の新聞に連載されていました。
　故国を守るために、一身の命を献げて、この作戦に参加しよう。まったくの愛国の犠牲精神ですが、こうした犠牲精神は人間だけのものでしょう。動物でも子を守ろうとして身を投じる親は時に無いことは無いが、しかし人間のように犠牲だとの意識を持って死地に赴くものはいない。人間は本能的に死を恐れないのではない。意志的に死を恐れず、身を献げるのです。
　こういう犠牲精神は人間特有のものです。そして、これこそ神の形に造られた人間の持って生まれた特有の精神です。キリストの精神です。
　人間は恐怖心、自己保存本能、いろんなものに災いされて、この自己犠牲本能はしばしば薄れやすいし、また砕かれ、喪失しやすい。しかし又、この性質の顕現を美わしく思い、尊敬し、これを称えます。
　これを物語として聞くだけなら、涙を流して感動します。該当者になることは決して好きではないが、しかし、祖国のため、また同族のため、いや実は自分の信じる信仰のためには喜んで死ぬ。そういう殉教者は歴代のキリスト教史に数多く、現れています。
　そして、何よりもイエス様ご自身、人類の罪のあがないのため、犠牲の死を十字架上で遂げられたのです。
　愛する御子を十字架上に見殺しにする神様の愛こそ、この最大の犠牲の原点でしょう。霊的宇宙のすべての基本土台はこの神様の愛である。この父なる神の愛を褒めたたえましょう。


　　　　　　　　　　[この項おわり]