先日の新聞にアグネス・チャンさんの顔が出ていました。「癌を隠さない勇気」という、大きな活字の見出しがあります。
　おや、「癌を隠さない勇気」ということがあるのかと私は驚いたのですが、かつて私の妻は癌を持っていながら、それを誰にも知らさず、快活に生きていました。あれも「勇気」だと思うのですが、いかがなものでしょう。
　妻は最初、30歳前後の頃でしたか、乳癌になりました。私の神癒伝道第一期のころで、絶対妥協しませんでした。たとえ死ぬのなら死んでくれ、と私は妻に宣言しました。それが、いつの間にか治ってしまっていたのです。
　そして、今度は肺癌になりました。人は先の乳癌の転移だと言いました。私は承知せず、医者にも行きませんでした。その後、東京・板橋の誠志会病院の先生に見てもらう機会があり、その時、先生曰く、「ああ、治っていますね。しかし、大分に帰ったら手術してもらってください」。
　私と妻はウキウキして、三田線の蓮根駅まで歩んだことを覚えています。
　大分に帰り、県立病院に行って、手術を受けました。手術が終わると、医師が大きな塊を見せてくれました。妻の肺から摘出した肺の死んだ癌巣でした。
　こうして、妻は癌を２度経験しましたが、すべては快癒しています。
　しかし、やはり癌は人生を考えさせる病です。
　死に至るまでに、かなりの時間があるのです。人生にとって死は常にそうであります。メメント・モリ！　死を覚えつつ生きる。そこに人生がある。