私の少年時代、そう、昭和十年前後ですが、少年倶楽部という、当時としては、猛烈に売れに売れた雑誌がありました。中でも、最も読まれたのが、「のらくろ」というマンガ。そのマンガの作者田河水泡さんは亡くなっていますが、晩年に「人生おもしろ説法」という本を書きました。マンガ家になる前、落語の台本を書いていたというだけあって、読んで吹き出すような面白文章を満載しています。
　実は田河さんはクリスチャンでした。田河さんがかつて会員であった教会には当時そうそうたる神学者が在籍し、桑田秀延先生も会員として居られました。田河さんが桑田先生に「キリスト教にはユーモアがありませんね」と言ったら、「そうだ、そうだ、それを君に頼む」と力強い語調で言われたそうです。桑田先生、エライ！　と言いたい。
　ユーモアの特質は「共笑い」です。笑わせる者も、笑わせられる者も、そばに居る者も、共に笑う。そこに共感や友情や平和が生まれる。シモン(葦)をペテロ(巌)と呼ばれたイエス様、私たちの救い主はなんとユーモラスな方と思いませんか。