その３　某月某日

　台風一過という感じでもないが、暑くなりそうな空気。
　今朝は外を見ても親鳩は来ていない。やはり、鳥はやっぱり「鳥頭」か。
　向かいの家の前をあの野良猫、マスクが肩をそびやかすように歩いている。段ボールのケージの新聞紙を取り替える。餌はトウモロコシがたくさん残っていた。麻の実やソバなどの小さな穀類は食べているみたい。畳めない羽が１本になっている。治ったのか、抜けたのか（後に抜けたと分かる）。
　書斎の天窓を開放し、廊下からキッチンへのドアも開け放して風通りをよくして、仕事場へ出かける。
　Ｉさんからメール。「もともと飛べない子なのかもしれない。上の方から落としてみますか？」と。
　うーん、もしかしたら、生まれつき未熟児だったとか？
　昼ごはんを食べに外出すると、かなり暑い。家人も仕事に行ったが、打ち合わせ前に一旦自宅に寄ると連絡が入る。鳩が気になっているのだ。
　仕事の合間に「キジバト」「生態」「飼育」「保護」……で徹底的にネット検索してみる。キジバトは全長約33センチ。１回に卵を２個産む。抱卵日数は約２週間で、巣立ちまでは約18日だという。しかし、うちにいる鳩はかなり小さい。いったい生まれてから何日目くらいなのか。写真つきの情報を探す。
　……あった。「傷病鳥獣情報」にうちと同じような姿形のキジバトの写真が出ている。「まだ産毛が見られ、数メートル羽ばたいては歩くような感じ」「野生らしく人の気配に強く反応し、嘴をカチカチ鳴らしたり、翼を広げたりして威嚇してきます」。
　そうか、毛羽だちだと思っていたのは産毛か。そういえば頭に黄色のぽやぽやの毛が生えていた。家に帰ってケージをのぞき込むと、羽を膨らませて威嚇してくる。やっぱり……。
　仕事から戻ってきた家人にプリントアウトした記事を見せると、「これだ」と納得している。
　昼間、アパートの階段の踊り場で鳥を飛ばせてみたという。飛行距離はせいぜい２メートルくらい。
「鶏のほうがもっと飛ぶよ。毎日、飛行訓練すればいいかな」。
　だが、しかし、この鳩がいつになったら飛ぶのかは不明。鳩君、君はいくつなの？
　明日、Ｉさん一家が鳩のようすを見にきてくれるという。鳩に威嚇された話をすると「かわいい」という。私にはみにくい鳩の子でしかないのだが……。

【つづく】