いつごろからだろうか、筆者あてにワイセツ物のカタログが定期的に送られてくるようになった。三ヵ月に１回くらいの頻度だろうか。
　ワイセツ物とは、伝統的な言い方をすれば「大人のおもちゃ」である。今風の言い方をすれば「アダルトグッズ」であろうか。
　そもそも、発送先リストに筆者の住所氏名が載っているのが面妖なのだが、どこやらから情報が流出したのであろう。
　つまり、「日本のスケベ男××万人」のリストに筆者は掲載されていることになる。
　う〜ん。ちょっと悩ましい。
　発送停止要請もできるが、なまじ連絡をすると薮蛇の結果になることもあり、こういうものは無視するにかぎるという。そこで、放っている。相変わらず定期的にワイセツ物のカタログが送られてくる。

　さて、前置きが長くなったが、かくいう次第で、筆者は定期的にその種のカタログに目を通しているのだが、内容は大別して裏ビデオ、性具、精力剤に分けられる。
　近年、顕著な変化があるのに気づいた。
　性具や精力剤は従来とほとんど変わりがないが、ビデオに大きな変化がある。それは、いわゆる熟女物が激増したことである。
　高齢化社会になり、しかも健康で精力的な高齢者が多い証拠、アダルトグッズを恥ずかしがらずに購入する高齢者が多い証拠といえようか。
　今回送られてきたカタログから、ビデオのタイトルの一部を紹介しよう。

実録投稿・熟女の筆おろし
還暦・六十路の中出し交尾
吠えまくり・五十路の強欲ねばり腰
豊満熟女・癒しの中出し
還暦古希・最高齢熟女中出し
完熟オナニー・若い娘より過激に華開く
姥桜・発酵五十路中出し
滴るエロス・超熟ラプソディー
投稿！隣の変態おばさまを探せ！
昭和40年代・牝たちのオナニー

　などなどである。
　ああ、なんだか、頭がくらくらしてきた。
　すべて、熟女のあられもないかっこうの写真つきである。よほどデジカメでカタログを撮影し、紹介しようかとも思ったのだが、当サイトの品位を考えて断念した。
　内容は、タイトルから想像していただくしかない。

　こういうカタログでタイトルや熟女の写真を見て、
「女のほうがスケベなんだよ」
「本質的に女のほうがスケベだからな」
　などと述懐する男性諸氏は多いであろう。
　しかし、筆者は「おいおい、待ってくれよ」と言いたい。
　こういう熟女物のビデオを買うのは、男なのだ。まず、女は買わないであろう。

　世に、「本当は女のほうが男よりもスケベ」という俗説はけっこう流布しており、得々として語る男性諸氏は多い。
　筆者はかねてから、この俗説の出所は池波正太郎の小説ではないかと疑っている。池波氏の時代小説には、主人公の男がそういう述懐をする場面が多々あった。多くの男性はそれに洗脳されたのではなかろうか。
　逆から言えば、池波正太郎の小説がいかに男性読者に愛され、心をとらえたかの証左であろう。
　心憎いくらい、うまい作家だった。
　
　現実はどうか。
　筆者は女性の弁護をするつもりは毛頭ないし、世の中にはスケベな女も多数存在するであろう。しかし、割合からする限り、圧倒的にスケベな男のほうが多いのではなかろうか。
　やはり、男のほうが女よりスケベである。
　少なくとも、能動的なスケベ、あるいは性に関する愚行を演じるのは圧倒的に男のほうが多い。
　これはいい悪いの問題ではなく、いわば男の性（さが）であろう。
　男のサガ、あるいは愚かさが、高齢化社会になり、熟女物の裏ビデオ市場を支えているのではなかろうか。

　なお、男のスケベや愚かさに関しては、筆者自身にもやや思いあたることがあるのを付記しておきます。もしかしたら、「やや」ではなく、「かなり」かもしれません。