中国遼寧省の大連に行ってきた。中国は３回目であるが、大連を訪れたのは初めてである。
　写真は、宿泊していたホテルの部屋（12階）の窓から撮影した街並みだが、高層ビルが建ち並び、経済成長がめざましい。
　その大連で、マッサージを受けてきた。
　２枚目の写真は、筆者が施療を受けたマッサージ店「盲人順�g推拿所」の外観である。
　看板の「盲人」という直截的な表現には、現代の日本人の感覚ではギョッとするものがある。しかし、中国の漢字表現に差別意識はない。「盲目の按摩師がやっているのだから漢方医術のマッサージですよ」という一種の本格宣言であるし、誇りの表明でもあろう。
　というのは、いま大連には大別して3種のマッサージ店があるからだ。
　１つは、筆者が経験したような、漢方にもとづく伝統的な按摩術である。たいてい場末の下町にあり、外観もさほどきれいではないし、客のほとんどは中国人である。
　２つは、高級マッサージ店で、目抜き通りのビルの中にあり、サウナや浴室を備え、飲食もできる。客は大連に駐在する外国人、旅行者、そして富裕層の中国人である。容姿端麗なマッサージ師がそろっているが、技術はさほど高くないようだ。
　３つは、風俗営業としてのマッサージ、いわゆる性感マッサージ店で、日本でノウハウを学んだ元留学生が経営している。日本から中国への、一種の技術伝播といえようか。按摩師はもちろんすべて若い美女である。客は外国系企業の駐在員や旅行者、富裕な中国人だが、おそらく日本人が大部分であろう。

　さて、盲人順�g推拿所の施療を述べよう。
　まず、上着やズボンを脱ぐ（真っ裸にはならない）。12月という時期を考え、筆者は日本からズボン下（股引）を用意していったのだが、氷点下のきびしい寒気にはとても耐えられない。そこで、現地で厚手ズボン下と厚手シャツを買い求め、それを着用していた。つまり、ズボン下と厚手シャツという、いかにもジジむさい姿になった。
　靴下を脱いで椅子に座り、洗面器のお湯に足をひたす。「あっちっち」と言いたくなるくらいの熱い湯である。足を温めて血行をよくしているあいだ、丹念に肩をもみほぐす。
　つぎに、ベッドに仰向けに寝て、足のマッサージが始まる。この足マッサージが独特であり、しかも時間をかける。なにやら油を塗りこみながら、足の裏をこすると同時に、指圧を加えるのだが、指の力がものすごい。ツボをギュウ、ギュウ押されると、悲鳴をあげたくなるほどだった。さらに、指の一本一本を丹念にこすりながら、足指の先のツボにも強烈な指圧をほどこしていく。筆者はこれまで各種のマッサージを経験しているが、足のツボをこれほど時間をかけ、かつ強く刺激されたのは初めてだった。
　つぎに、うつ伏せであるが、ベッドの上部に穴が開いていて、そこに顔をあてると鼻と口が圧迫されることなく、自由に息ができる仕組みになっていた。ベタッとうつ伏せに寝て、首、肩、背中、腰に指圧を受ける。さきにも述べたように、とにかく指の力がすごい。強力な指先で、これでもか、これでもかというくらいツボを丹念に押していく。
　痛いことは痛いのだが、けっして苦痛ではない。途中から、筆者は半死半生の桃源郷に浮遊しているかのようだった。
　すべて終わるまでに、1時間以上かかった。
　終了後、白衣の按摩師が診断を下した。
「椅子に座りっぱなしの生活をしているであろう。首と肩、背中、腰のすべてがよくない。最悪である。もう、ボロボロと言ってよい」
　筆者もある程度は予期していたのだが、ここまで酷評されるとさすがにショックである。
　死期を宣告された気分とでも言おうか。
　呆然として脱力感に襲われ、うつ伏せになったまま、しばらくはベッドから起き上がれなかった。

　３番目の風俗マッサージ店については、次回に述べよう。