第五章　ガンも身のうち３

　ところで、治療も真に合理的なものがあるかというと、それほど明晰なものはありません。手術、抗ガン剤による化学療法、放射線療法が三大療法とされますが「ガンが切れば治るのか？」という話になると、きっちり周りの正常組織含めて切り取れた「根治」手術のあとに、再発・転移を起こすことも珍しくありません。
　また、前に書きましたように、無理矢理に再発・転移したガンを根こそぎ取ったところで、手術のあとにすぐに亡くなった元アナウンサーのタレントのようなことになります。手術も頃合いを外れると、せっかく助けるために施行した治療が、かえって患者を崖から蹴落とすような結果になりかねません。
　抗ガン剤や放射線は、ガンに効果がありますが、同時に悪くすると正常細胞をも撲滅しかねません。抗ガン剤や放射線は、治療手段ですが、発ガン性や一定の閾値を超えると致死性が突出する諸刃の剣です。したがって、その使用にはデリケートなさじ加減が重要ですが、わが国には専門家はごくわずかしかおらず、専門施設も不足の状況です。
　わが大腸ガンもイレウスを起こすところまで成長した以上、ガンに退去いただくには手術による強制執行しかありませんでした。だから、患者自身、入院以来Ｉ先生やＹ先生から何とか切れそうだという話をうかがえば、何とか大過なく手術できるようになればいいのにと念じ続けてはきました。
　同時に、何とか切ってもらえたからといって、即すっきりする病気ではありません。術後も節々がリュウマチのように痛んだり筋肉痛がひどかったりしますが、これらは傍腫瘍症候群と呼ばれています。
　リュウマチや皮膚筋炎などの自己免疫疾患が発現し易い場所として、関節や筋肉といったところは一種の身体の免疫状態のバロメーターです。このあたりの病態は、ガン関係の文献を漁っても、あまり明晰な話は拾えませんでしたが、わが身で日々感じている術後のガンの挙動がうかがえるところです。このところは、じんま疹のようなかゆみの強いエピソードが続いています。
　もちろん、ヤブの憶測ですから、実はこの症状が骨転移だったなんてことも十分あり得ます。メーリングリストで知り合いの開業医は、大腸ガンの骨転移で亡くなりました。
　仮に、そうなっていれば、シンチグラムをとったからといって今更、特に治療につながると思えないので、わが身にすれば憶測のレベルで十分ということで適宜に運動したり、マッサージしたりしてリハビリに励んでいます。


　　　　　　　　　　　[この項つづく]