誤解と反発を受けるのを覚悟で書こう。
　もちろん、誤解と反発をせずに最後まで読んでいただければ、それに越したことはないのだが。
　まず、筆者が経験した最近の事例を２つ述べたい。

事例１
　男女を含む数人で話をしていたとき、たまたま風俗店が話題になった。
　A氏が言った。
「僕は、風俗店には一度も行ったことはない。金で女性を買うのは嫌いだな。セックスは金で買うものではないよ」
　その席の、とくに女性は大いに共鳴しているようだった。
　女性たちは口々に言う。
「風俗店に行く男性って、不潔よねぇ」
　筆者は内心、ウーンとうなった。
　たしかに、A氏の意見は立派である。
　もしA氏が純潔をたっとび、浮気や不倫などまったく無縁な、性的に潔癖な人物だったら、筆者もその意見を尊重する。
　だが、A氏は名うての女たらしなのだ。同時進行の浮気や不倫も含め、つねに身辺に女出入りが絶えない。もちろん、A氏からすればそれらはすべて「恋愛」なのだろうが。
　こういう場合、A氏は「恋多き男」で、風俗店に行くのは「唾棄すべき不潔な男」となるのだろうか？
　筆者は釈然としない。
　世の中には、ブランド品などを買いあたえて女をなびかせる男もいる。かたや、ブランド品が目的で体を許す女もいる。この場合、風俗店で女性を買うのと実質的にどう違うのだろうか。
　そういえば、某IT長者は、「女はお金についてくる」と豪語している。このことばをたてまえで非難するのはたやすい。とくに、女性の側からの反発は強いようだ。しかし、「お金についていく女」が存在するのも厳然たる事実であろう。それを考えると、一概に非難はできまい。

事例２
　ある席で筆者が、
「現実に売春が存在する以上、むしろ売春を合法化したほうがよい。警察の許可制のもとできちんと営業し、定期的な健康診断も義務付けたほうが、暴力団などの介入を防げるし、売春に従事する女性の人権と健康も守れる。なまじ非合法だから、裏の世界と結びつくのだ。欧米諸国の一部では、地域を限定して売春を合法化している。これにならい、日本でも売春特区を制定してはどうか。これこそ、地域の活性化に結びつくであろう」
　という意味の発言をした。
　すると、同席していたB女史が烈火のごとく激怒した。
「あなたは女性を蔑視している。売春とは、女性を金で買うことではないか。女性を人間として認めていないということであり、人間の尊厳への侮辱である。女性の立場として、あなたの意見は絶対に容認できない。自己批判せよ」
　という意味のことを、怒髪天を衝く勢いでまくし立てた。
　いっさいの反論を許さない。もう、完全にヒステリーである。ほかに人がいたこともあって、筆者はそれ以上議論するのをやめた。
　B女史の論旨は、たしかに正論であろう。だが、その「正論」を杓子定規に適用して売春を非合法化しているからこそ、売春が裏世界にもぐるのではないか。筆者が主張しているのは、現実的な対応なのだ。

　以下、かなり露骨な表現をするが、問題点を明確にするためなので、ご寛恕願いたい。
　そもそも、売春とは何か。女が不特定多数の男と性交をして金銭を得る行為である。また、性交とは、陰茎を膣に挿入し、射精する行為である。
　さて、現代、キャバクラ、ピンサロ、イメクラ、性感、エステ、ヘルス、デリヘル、ソープ、SMなどなど、風俗店の形態は百花繚乱である。風俗店は別名「射精産業」とも呼ばれるように、形態こそさまざまだが、最後は客に射精をさせる。
　では、これら各種の風俗店はなぜ堂々と宣伝し、営業しているのか。
　手、口、あるいは素股による射精であり、本番（性交）はしないからだ。本番をしない限り、どんな性的なサービスをおこなって金銭を得ても、売春防止法には抵触しないのだ。
　時々、埼玉県の西川口や、横浜市の黄金町あたりの風俗店に警察の手入れが入り、従業員と客の双方が売春防止法違反で検挙されたなどという記事が新聞の片隅に出ている。これらは、こっそり本番行為をしていたため、法律に触れたのである。たとえば素股でしていれば、法律には触れなかったのである。
　売春防止法の馬鹿馬鹿しさであり、滑稽さだとも思うが、そもそも法律は杓子定規なものである。どんな法律にも、触れる触れないの矛盾や盲点があるのはいたし方あるまい。
　ともあれ、わが国の売春禁止の実態は、上記の通りなのだ。
　筆者はあらためてB女史に反問したい。
「売春はいけないというのなら、女が口や手や素股で男に射精させて金をもらうのは売春ではないので、認めるのですか？」
　きょとんとした顔で、「スマタって何ですか」と問い返されても困るけどなぁ。
　なお、素股についての詳細は前回（吠54江戸のイメクラと素股）を参照ください。

　筆者は声を大にして吠えたい。
　風俗産業に対し、手、口、素股で射精したか、本番（性交）かを区別して厳しく規制しているいっぽうで、通勤通学路に風俗店の客引きが横行しているという実態がある。繁華街では風俗店のスカウトが高校生くらいの若い女性に声をかけているのが現実だし、けばけばしい看板も町に氾濫している。
　規制すべきは、店の場所や、広告宣伝のあり方や、働く女性の年齢、在学中かどうかなどであろう。本番だけを取り締まることに、いったいどんな意味があるのだろうか。
　現在の売春防止法は廃止して、あらためて国民の代表である国会で、妙に糊塗することなく射精手段も含む明快な議論をして、きちんと売春の定義や風俗産業のありかたを定めるべきではないだろうか。